最初、ワークGは走路@上の出発点に
停止しています。
走路@が計算された傾斜角だけ傾動し、ワークGが
滑り出し、走路@の端で速度をチェックします。
ワークGの速度が不足していれば、引き続き走路Aが
計算された角度で傾動し、ワークGを所定の速度まで
加速します。
ワークGが所定の速度に達したら、走路Bは傾動せず、
ワークGは慣性走行を続けます。(省エネ走行です。)
ワークGを停止させるために、走路CはワークGに必要な
減速度を与えるため計算された角度で、逆方向に傾動して、
ブレーキを掛けます。
ワークGが到着点近傍で所定の停止速度にまで減速したら、
走路Cを水平に戻し、機械的ストッパー又はリニアモータ等の
外部的な装置により、ワークGを所定位置に停止させます。
 このテストのS字型走路は元々別の目的で試作した物であり、必ずしも
コーヒーカップを運ぶのに最適に設計された走路ではありませんが、
0.5度程度の僅かな勾配があれば、コーヒーを入れたカップ等の軽量なものを
浮上させて、清潔且つ静粛に、運ぶことができます。

 因みに、0.5度の勾配があると10mで8.7cmの高さの差が生じますが、もし、
走路の端でコーヒーカップを置き直すことが可能であれば、走路の両端を
つないでループ状にし、グルグル回転搬送させることも出来ます。

 勿論、最初からその様な目的で走路を設計すれば、ビデオのコーヒーカップ
のように回ってしまう事もないし、走路の勾配と非接触的速度減衰器を適切に
設定することにより、安定した終速度で搬送することは十分可能です。
(ビデオに示すテストでは速度減衰器はありません。)
 精密な部品加工や組立ラインにおける工程間搬送では、部品に僅かでもゴミが付着していると、
組立てられた機器の耐久性、信頼性が損なわれます。
最悪の場合にはユーザーに渡ってから事故を引起し、メーカーの命取りになる危険性があるため、
重要部品の加工、組立ラインでは従来のローラーコンベア等に代るクリーンな搬送装置が求められ
ています。

 ここにご紹介する標準エア浮上レールは、長さ1m、幅0.09mで、簡単なコースターを使って複雑な形状の部品も、エア浮上させて非接触的に搬送できるため、搬送中のゴミ付着を防止できます。

重力駆動方式

 重力を利用して斜面を滑らせて物を搬送する方法は大昔から使われており、現在もグラビティローラーコンベヤがあります。
この方法は地球の重力が仕事をしてくれる(重力場のポテンシャルエネルギーが搬送用エネルギーになる)ので大変結構な方法なのですが、
従来、高低差が始めからある単純な搬送(高所から低所への荷下ろし、意図的に段差を設けた工程間搬送など)に用途が限定されていました。

 その理由の一つは、搬送用エネルギーに摩擦抵抗による損失が含まれるため、損失分に見合ったポテンシャルエネルギー(2点間の高度差)が
必要となり長い距離の搬送には使い難いこと、二つめの理由は、速度の制御が難しいことです。ブレーキが外れた貨車が僅かな線路の勾配で
動き出し、最初はゆっくりでも重力による等加速度運動のため段々増速し最後は大暴走する話と同じで、遊園地のジェットコースターなら兎も角、
一般産業向けの搬送に重力を応用する場合には、如何にして速度を制御するかが大きな課題となります。

 今、重力加速度をG、走路の傾斜角をα、走路の摩擦係数をμとすれば、走路に沿った駆動加速度は(G・sinα−μ・cosα)と表せます。
エア浮上搬送では摩擦抵抗が殆ど無い(μ≒0)ため、走路の傾斜角αを(時間の関数として)制御することにより、被搬送物の速度(加速度の
積分)を容易に制御することができ、所定速度に達した後はα=0 の慣性走行モードも可能です。また、走路長が限定された比較的単純な搬送の
場合には、αを適正な一定値として適切な手段で速度に応じた減衰力を作用させることにより、安定した終速度で搬送することも可能です。
以下では、傾斜角αを可変制御する方式と、単純なα一定の場合の例について、ご説明します。

1.走路傾斜角可変制御方式(走路分割傾動方式)

 摩擦抵抗のないエア浮上搬送では、もし搬送走路の傾斜角を任意に可変制御することが出来れば、搬送荷重に関わらずに搬送用キャリヤの
加速度を制御することができます。そして、走路の傾斜角をコントロールすることにより搬送用キャリヤが所定の速度になったら、傾斜角をゼロ、
即ち加速度ゼロにして慣性走行に入ります。慣性走行区間では消費エネルギーはゼロですから、大変経済的です。
但し、幾ら傾斜角が少ないと言っても、搬送距離Lが長くなれば、出発点と到着点の落差(高度差)はL×tanαとなり、現実的ではありません。
 この問題を解決し、クリーンルーム内の長距離搬送に重力搬送方式のメリットを活かすために考案された方式(工業所有権出願済み)が、
走路分割傾動方式です。駆動原理を下図によりご説明します。

@〜Cは分割された走路を、Eは各分割走路に適宜に配置された位置及び速度センサーを、Gは搬送用キャリヤに搭載された
ワークを、夫々示します。なお、走路を傾動させる機構には色々な方法があるので、ここには示しません。



2.走路傾斜角一定方式(滑り台方式)

 エア浮上搬送の場合は、僅かな傾斜でもワークは滑って行きます。一例として、勾配0.5度、幅90mmのS字型走路に
 直径85mm厚さ2mmの円板を滑らせるテストと、1m標準レールで精密傘歯車を送る様子をビデオに示します。